【感想】横溝正史「八つ墓村」ドロドロとした恐怖が重くのしかかる

2022年4月29日

こんにちは。つぼたっくのあおいです。

今回は横溝正史さんの「八つ墓村」を読んだ感想について紹介します。

小説を読み始めて約1年が経ちましたが、どうやら自分はミステリー小説が好きなようです。ある日ミステリー小説を探しに本屋へ行くと、「八つ墓村」の恐ろしい表紙が自分の目を惹きました。

そういえば、横溝作品は全く触れたことなかったですね。八つ墓村とか犬神家の一族とか名前は聞いたことあるけど、映画やドラマ、もちろん小説などにも全く触れたことが無かったです。

ミステリー好きとして、横溝作品を読まない訳にはいかない!と、早速八つ墓村を購入しました。金田一耕助シリーズの1作品目なんですね。そもそも、八つ墓村とか犬神家の一族が金田一耕助シリーズということを初めて知りました。。

最近、ドラマで金田一少年の事件簿が始まったのでちょうど良いタイミングですね。

書籍概要

題名:八つ墓村

著者:横溝正史

初版発行日:昭和46年4月30日

出版社:角川文庫

あらすじ

八つ墓村の由来

戦国時代に財宝を持った8人の武者がとある村に逃げ込んだ。村人たちは敵の武将に追われている武者達を村にかくまう。だが、財宝に目がくらんだ村人はその8人を惨殺してしまう。

その後、村では奇怪な事件が多発する。次々に村人が事故死したり、気が狂った村人が人々を惨殺したり―。武者たちの呪いだと恐れた村人たちは、8人の武者魂を鎮めるために8つの墓を立てた。

これが八つ墓村の由来である。

八つ墓村での事件

この小説の物語が始まる前に、語られるべき事件がある。言わばこの小説の発端となる事件。八つ墓村の名家「多治見家」の主人多治見要蔵が起こした凄惨な事件である。要蔵は妻や子がいるにも関わらず、村の鶴子という女に恋をする。

残虐非道な性格を持つ要蔵は、無理やり女を家に監禁し、非道の限りを尽くす。そんな二人の間に辰弥という男の子を授かる。

だが、鶴子は要蔵に監禁されている間も、亀井陽一という青年と密かに逢引きを続けていた。そのため、村では要蔵の子は実は鶴子と亀井陽一の子どもなのではないかという噂が飛び交う。

それを耳にした要蔵は怒り狂うが、命の危険を感じた鶴子は息子の辰弥をつれて村から逃走する。

鶴子が逃走して数日が経った後、遂に要蔵が爆発してしまう。詰襟の洋服を着て、足に草鞋を履き、懐中電灯を角のように頭にさし、胸には鏡をぶら下げるという奇怪な格好をして村を暴れまわる。

日本刀や猟銃などで32人の村人たちを無差別に惨殺していく。その後、要蔵は山の中に逃げ込んでいき、行方不明となってしまう。

物語が幕を開ける

要蔵の起こした、事件の約20年後。辰弥は会社で働いていた。既に母(鶴子)は死んでおり、一人暮らしをしていた。

ある日突然、八つ墓村から森美也子という女が訪ねてくる。要蔵の息子であり、多治見家の血を継ぐ辰弥に多治見家を継がせるために、八つ墓村に連れ帰ることが目的である。

辰弥は初めて父の事件のことを耳にして困惑するが、多治見家を継ぐ決意をして八つ墓村に行くことになるが。。。

様々な恐怖が辰弥を待ち受ける。

実際の事件がモデル

八つ墓村にはモデルとなった事件があります。

岡山県津山市で実際に起こった事件「津山三十人殺し」がモデルになったと言われています。自分は岡山出身なので、それを知ったときはゾッと背筋が凍りそうになりました。

上のあらすじで説明した、32人が惨殺された事件のモデルなのですが、びっくりするほど事件の内容が似ています。

当時は世間に大きい衝撃を与えた事件のため、この小説の発売時は相当世間に衝撃を与えたことだと思います。

凄惨で目をそむけたくなるような事件ですが、この小説を読む前に事件について知っておくのも良いかと思います。

主人公が小説の作者

この物語は、主人公の辰弥が自分の体験談を小説にまとめたもの。という設定です。物語の一部始終が主人公の視点で、後日談として、語られています。

主人公も辰弥、語り手も(後日の)辰弥、作者も(後日の)辰弥という、ことになりますね。八つ墓村という横溝正史の作品の中で、辰弥の書いた小説を見ているという構造になっています。

そういえば、前読んだ松本清張の「風紋」もそんな設定だったような。。当時そういうものが流行ったんですかね。現代のイレギュラーな設定をしている小説にも通ずるところがあると思います。

そして、主人公が作者のため、主人公の視点からしか物語は描かれません。つまり、他の人視点はほとんど描かれないので、読者は探偵(金田一)はこの事件をどこまで推理しているのか、多治見家の人たちは何を考えているのか、村の人は主人公に対してどう思っているのか。が全て主人公の主観です。

そのため、読者は主人公とほとんど同じ理解度、同じ心境となって物語を読み進めていくことになります。そのことがより臨場感を与えて、読者を恐怖に叩き落しているのかと感じました。

特に、探偵側の視点はほとんど描かれていないのが特徴的でした。ミステリー小説といえば大体探偵が主人公か、その助手が主人公だったりするので、主人公と探偵がほとんど関わらずにストーリーが進行していくのは新鮮でした。

感想

結局怖いのは人間

山奥のド田舎の集落というのはとても恐ろしい場所だなと感じました。噂はすぐに伝わるし、よそ者に対する敵対心も凄い、更に心神深く興奮すると話が通じない。

集落はホラー作品の舞台になりやすいのですが、それもうなづけますね。読んでいて、とにかく村の人々の奇行が恐ろしかったです。治外法権というか、一般の法律が通用しない相手ってめちゃくちゃ怖いですよね。

更に、主人公の辰弥は凄惨な事件を起こした要蔵の息子というのは村中に知れ渡っているので、村人たちの主人公に対する態度は読んでいてとても苦しかったです。田舎の人たちってなんとなく温かいイメージがありますが、絶対そんなことは無い。とこの小説を読んだら考えを改めると思います。

そこに拍車をかけて、恨み、妬み、復讐、策略、などの人間関係のドロドロも加わります。リアルな人間関係のもつれが起こす事件ほど、恐ろしいです。

村人の狂気、人間関係のもつれなど、改めて人間は怖いなあと感じる作品でした。それと同時に、人間模様の描写がとても巧みだなと感じました。

謎が謎を呼び更に恐怖が倍増する

この小説では、八つ墓村の村人が次々と謎の死を遂げていきます。計画的な殺人なのか、猟奇的な殺人なのか、それとも、生贄として八つ墓村の伝説に捧げるための殺人なのか、全く分かりません。

作中に怪しい人物がたくさん描かれており、主人公の視点からしか描かれないので、ほぼすべての登場人物が怪しく感じます。まさに謎が謎を呼ぶ展開で、主人公と同じくらい疑心暗鬼になりながら読んでいました(笑)

村人をいかにも犯人のように怪しく描くので、騙されるんですよね。

また、恐怖をそそるような描写が特徴的で、恐怖がより煽られます。洞窟の中で主人公が逃げているシーンなどは少しトラウマになりました。文字だけで鬱蒼とした静かな恐怖をリアルに表現できるのは本当にすごいと思いました。

小説ならではの楽しみでもありますね。

あと、「この後にあんな恐ろしいことが待ち受けようとは」など主人公の後日談ならではの表現もあり、この後恐ろしいことが起こるんだ。。とドキドキしながら読むことができました。

残酷で救いのない話ですが、最後は何とかハッピーエンドでした。謎もスッキリ解決したので、後味は良かったですね。

主人公の後日談ということもあり、無事事件は解決している。という前提があるのでその点は安心して読むことができました。

こんな人にオススメ

ミステリー好き

ミステリーを語る上で、この本は欠かせないと思います。自分も読んでよかったと納得の1冊でした。また、最近の小説の中でも横溝作品が出てくることがあるので、知識として読んでおいても良いと思います。

田舎の暮らしに憧れている人

田舎暮らしに憧れている人は、一旦この小説を読んで考えてみて欲しいです(笑)

この小説程ではないけど、今の田舎の村での生活と通ずるところはあると思います。本当に田舎は噂が広まるが早いし、嫉妬深い人や、過干渉の人とか多いので!

どんよりとしたホラーが読みたい人

この鬱屈としたストーリは癖になると思います。じわじわとすり寄ってくる恐怖はホラー好きにはぴったりです。

まとめ

横溝正史さんの「八つ墓村」を読んだ感想を紹介しました。

たまには昔の小説を読むのも良いですね。当時の時代背景を感じることができるのも良い体験になります。

ただ、文章が難点ですね。読んでいて分からない単語や読めない漢字が多かったので読むのに苦労しました。

小説をあまり読んだことがない人にとっては難しい作品かなと思います。

約500ページという長い作品ですが、臨場感のある恐怖にのめり込むことができ、大変楽しめました。

次は「犬神家の一族」を読んでみたいですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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