【感想】松本清張「半生の記」過酷すぎる昭和初期の生活

「戦争に出兵した方がマシ」そう思えてしまうような日常を想像できますか?

今回紹介するのは松本清張の私小説「半生の記」

遅咲きの小説家 松本清張の苛酷な半生が自身の振り返りと共に、語られています。

小説家になる前は、どういう環境で育ち、何をしていて、何を思って生きてきたのか。松本清張ファン必読の一冊です。

この一冊を読むことで松本清張の小説を読むことがもっと楽しくなる。そう思わせてくれる小説でした。

書籍概要

題名:半生の記

著者:松本清張

初版発行日:昭和45年6月

出版社:新潮文庫

感想

辛すぎる苦労人時代

皆さんご存じかもしれませんが、松本清張と言えば苦労人。遅咲きの小説家というイメージかと思います。戦争中の日本の情勢も相まって、とても苦労されてきたんだろう。ということはなんとなく知っていました。

ただ、本を読むとビックリ。その想像を余裕で超えていく苛酷さでした。

まず、何といっても家庭の貧しさ。中学校に通う余裕もなく、明日の暮らしを心配しながら生活している様は、なんとも心苦しかったです。

戦前の日本ってたぶん、今の時代の人が想像するより何倍も厳しい物だったんだよなあと、改めて感じました。

また、学歴のない松本清張が仕事で苦労しているシーンも多く、そこも胸にきました。

当時から学歴での差別は激しく、小学校しか卒業していない松本清張はなかなか仕事を見つけられません。手に職をつけるしかないと考えた清張は、町の印刷所で図工(印刷物を刷ったりする人?)として働きます。少ない日給で、夜遅くまで働き、家に帰ってからも勉強などをする生活。

淡々と事実を述べるような書き方なので、悲惨さはだいぶ軽減されているように感じましたが、
これを物語風により色を付けて表現されていたら、相当読むのがきつくなっていたかもしれないですね。。

同級生がスーツを着て楽しそうに街を歩く、姿を見て恥ずかしい気持ちになっているシーンなどはとても胸が痛くなりました。

他にも胸が痛くなるようなシーンが多くあり、松本清張の当時の苦労が相当なものだったと分かりました

人生経験が小説に反映

貧乏時代や、戦争への出兵、朝日新聞社での仕事、などなど、印象的なシーンはたくさんあります。

ただ、一番印象に残ったのは松本清張の人間観察力。この力がとても優れており、人間の欲望や嫉妬、汚い部分を描かれた小説に通じているのだと、感じました。

とにかく、人間の分析にたけており、本書の中でも、この人は○○だ。とかこの人は○○なところがある。など人間性の分析が鋭いです。

卑屈でブラック、そして少し見下しているような人間分析。嫌な人間や汚い人間をたくさん見てきたのでしょうね。自分の父を結構悪く書いているのも印象的でしたね。

特に「風紋」という小説には、朝日新聞社で働いていた経験が存分に反映されていました。モデルとなった人がたくさんいそうですよね。「半生の記」を読んでから「風紋」を読めば面白い部分がたくさんあると思います。

苛酷な人生を歩んできた松本清張の人間観察力が遺憾なく発揮されることによって、面白い小説を生み出すことができたんですね。

こんな人にオススメ

松本清張の小説が好きな人

ファン必読。小説が好きな人、気になっている人は是非読んで欲しいです。

私小説なので、それ以外の人にはあまりオススメは出来ないですね。

まとめ

今回は松本清張の「半生の記」を読んだ感想を紹介しました。

ページ数は200ページ弱と少なめですが、割とボリューミーで読むのに時間がかかりました。地名や昔の単語が多く読みずらかったことが原因ですかね。

戦争中、そして戦後の日本での苛酷な生活が描かれており、胸が締め付けられるような一冊でした。

でも、自分の祖父母が生きていた時代と考えると、そこまで遠い過去というわけでもないもが驚きです。また家に帰ったときに、当時の話を聞いてみたいなと思いました。

今の恵まれた時代で生活ができていることに感謝しながら、しっかりと生きていきたいと感じました。(今は今で大変なこともありますが)

戦争への出兵や、家族の話など、紹介したいことはまだまだたくさんありますが、書きすぎと本の内容と変わらなくなってしまうので、このくらいにとどめておきます。

気になった方は是非読んでみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました!