【感想】ホワイトラビット 何度も後ろからどつかれるような衝撃

2022年3月30日

こんにちは、つぼたっくのあおいです。

今回は伊坂幸太郎さんの「ホワイトラビット」を読んだ感想を紹介します。

最近はすっかり伊坂作品にドハマりし、片っ端から読んでいきたいなと思うようになってきました。そして今回選んだのは、「ホワイトラビット」。表紙とタイトルだけで面白いのが分かる。根拠は皆無ですが。おしゃれだなあと思う表紙の小説って面白いことが多いので、今回も即決で購入。

最近知ったのですが、本の内容を知らずに表紙だけで本を購入することをジャケ買いとか装丁買いって言うんですね。自分は基本的にジャケ買いが多いのですが、伊坂幸太郎さんの作品は全てジャケ買いをしていますね。。

感想について結論から言うと、まさにエンターテインメントな1冊!です。ほんとに面白かった~。物語が二転三転して、何度もうしろからどつかれたような衝撃がありました。

ネタバレ無しで本の魅力を紹介します。

書籍概要

題名:ホワイトラビット

著者:伊坂幸太郎

初版発行日:2017年9月

出版社:新潮文庫

あらすじ

この本は作者が白兎事件と呼ぶ、立て篭もり事件が様々な視点、様々な時系列から語られます。

その白兎事件の当事者の兎田は犯罪グループの一員で、上から指定された人間を誘拐する仕事をしている。ある日突然妻の綿子が誘拐されてしまう。誘拐したのは、兎田が所属する犯罪グループである。

犯罪グループは折尾という男にお金を持ち逃げされており、兎田に折尾を探し出すように命じている。人質がいたほうが一生懸命頑張るからという理由で妻を人質に取られた。

他の場面では黒澤という空き巣が一軒の家に侵入する。付き添いできた今村は黒澤から預かっていたあるものを誤って横の家に置いてきてしまう。空き巣に入る前に間違えて横の家に入り、更に預かり物を置いてきてしまう。今村が無能なことは置いておき、黒澤は空き巣に入った家の横の家に侵入するのだが、、、

様々な偶然や必然が重なり、白兎事件は思いもよらぬ終末を迎える。読んでいて何度も衝撃をうけるエンターテインメントな1冊です。

後ろからどつかれる衝撃とは?

この記事のタイトルに「何度も後ろからどつかれるような衝撃」と書きました。多少大げさ化もしれませんが、この本を読めば絶対にこのタイトルに共感して頂けるかと思います。

ネタバレはしたくないのであまり詳しくは説明しませんが、この物語には作者の伊坂幸太郎さんが仕掛けた罠がたくさん配置されます。それが非常に巧妙で普通に読んでいたら絶対に気付かないです。

その罠の伏線を回収して、最後に1つどんでん返しあるのではありません。その罠が時限式爆弾のように時間差で爆発し、何度も騙されます。だから何度も後ろからどつかれる、という表現にしています。読んでいて何かアトラクションに乗っているかのような感覚になるくらい楽しめました。こういう罠の仕掛け方は小説ならではという感じがして良いですね。

何度も言いますがまさにエンターテインメント。

特に最後の方は一気に衝撃が襲ってくるので、爽快感MAXです!

感想

語り手が特徴的

どの小説にも語り手(ナレーター、神の声などとも言う)というものが存在します。ただその語り手の視点は小説によって様々です。登場人物であったり、作者であったり作者とは別の第3者であったり。村上春樹さんの「アフターダーク」では「私たちの視点」と言い、観察はするが介入はしないなど独特な表現をしていましたね。

そして、語り手の特徴も小説によります。ただ単に事実のみを伝えたり、作者の意見を交えて解説したり、主人公の主観によって語られたりと様々です。

「ホワイトラビット」では語り手は作者です。そして、とにかく読者に語りかけてきます。物語の所々で、作者として解説や合いの手を入れてきます。過干渉では?と思うくらいとにかく作者による語りが特徴的です。

ただ、全く不快感や煩わしさはありません。これが凄いところですね。むしろ作者が登場すると待ってましたと心の中で上がりました。作者による解説を心待ちににしてしまっているんですよね。あれ?と思ったタイミングで、作者が颯爽と現れちょうど良い合いの手を入れてくれるのがとても心地よいのです。

作中でも明示していますが、「レ・ミゼラブル」の語り手を真似ているようですね。作中の登場人物が「レ・ミゼラブル」のことを「作者が妙にしゃしゃり出てくる」と表現しています。自分は読んだことが無いのですが、読んでみたいですね。とても長いということは知っているのでなかなか手は出せそうにないですが。

理不尽な世界を描くのが上手い

この世界は理不尽や不条理に溢れています。それは現実世界でも小説の世界でもです。伊坂幸太郎さんの作品にはどうすることもできない理不尽や不条理な出来事がよく起こるイメージです。何とも言えないような理不尽が登場人物を襲います。作者の他の作品「フーガとユーガ」でも理不尽な描写がリアルに描かれており、衝撃的でした。

何の罪もない人が理不尽な目にあう描写はいつも虚しい気持ちになります。でもそれがリアルなんですよね。実社会でも悲しい事件や、出来事はたくさん起こります。伊坂幸太郎さんの作品を読むたびに、そのような理不尽な出来事について深く考えさせられます。

この小説の兎田という男も妻を人質に取られるという理不尽な目に合うのですが、その兎田本人は犯罪グループの一員で、何人もの罪のない人を誘拐しています。最低な犯罪行為をしているから自業自得ではあるのですが、読んでいると兎田のことが可哀想になってくるんですよね。

おそらく「犯罪行為を行っていた人が、不幸な目にあった」という言葉だけ聞くと、「ざまあみろ」と思うのですが、小説を読んでいると感情移入してしまって、「可哀想」と思ってしまいます。人間の感情は何とも勝手ですね(笑)

ライオンのドキュメント映像を見ているときは、ライオンが餌のシマウマを捕まえて子供に与えていると「良かったねえ」と温かい気持ちになるのに、シマウマのドキュメント映像を見ているときは、襲ってきたライオンに対して「なんてことをするんだ!」と憎ましい気持ちになる現象と同じでしょうか。このような勝手な見方をしているようだと、この小説の罠は見破れないですね。

こんな人にオススメ

星座が好きな人

星座の逸話などになぞらえた話がたくさん出てきます。特にオリオン座が好きな人は絶対に読んで欲しいです。

コアな知識もたくさん出てくるので、星座に詳しい人はきっと楽しめます。

レ・ミゼラブルを読んだことがある人

上でも説明しましたが、是非読んで欲しい。自分もできることならレ・ミゼラブルを読んだ後にこの本を読みたかったです。

既にレ・ミゼラブルを読んだことがある人は、この本を読んで感想を教えて欲しいです(笑)

気持ちよく騙されたい人

小説で爽快感を味わいたい方は是非オススメ。気持ちよく騙されることができます。

まとめ

今回は伊坂幸太郎さんの「ホワイトラビット」を読んだ感想について紹介しました。

何度も言いますが、エンターテインメントな1冊。ここまで小説で楽しめたのは初めてでした。

作者の仕掛けた罠に爽快にハマっていく様はアトラクションに乗っているようでした。2転3転もする展開に衝撃を受けっぱなしでした。

伊坂幸太郎さんの本を読むのは4冊目ですが、本当に面白いですね。でも「ホワイトラビット」は今まで読んだ伊坂作品の中では一番好きかな。「死神の精度」と迷いますが。

まだまだこれからも伊坂作品を読んでいきたいと思いました。

気になった方は是非読んでみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました!