【感想】松本清張「風紋」会社って嫌なところだよね

2022年4月17日

こんにちは。つぼたっくのあおいです。

今回は松本清張さんの「風紋」を読んだ感想について紹介します。

とある企業の内情が描かれたミステリー小説でした。

いつ人が死ぬんだろう、ただの会社員しか出てきてないけど誰が探偵役なんだろう。と思って読んでたのですが、途中から「あっ、これ人死なないやつだ!」と気付きました笑

ミステリー=殺人 ではないですよね。そういえば、米澤穂信さんの「氷菓」も日常的なミステリーでした。

ミステリーにも、いろんなジャンルがあるんだなあ。もっといろんなジャンルを読みたいですね。

ネタバレ無しで感想などを紹介していきます。

書籍概要

題名:風紋

著者:松本清張                                  

出版社:光文社

あらすじ

主人公の今津章一は東方食品という食品会社に勤める一般社員。半年前に発足した社史編纂(しゃしへんさん)室に所属している。東方食品のワンマン社長の杠(ゆずりは)忠造の伝記を中心とした、社史の制作を任されている。

社史編纂といえば、左遷先のようなイメージが強いが、社史を調べる際に、社長や常務などに話を聞く機会が与えられることを聞いた今津は、会社の上層部と関わりが持てることを魅力に感じ、社史編纂質への異動を決意した。

思惑通り、会社の上層部と関わる機会が増えたことにより、会社の内情が明らかになってくる。

東方食品は看板商品の栄養食品「キャメラミン」によって、一躍有名企業となった。言わば、キャメラミンは会社を存続させるための生命線ともいえる商品である。

ある日、キャメラミンの栄養効果に疑惑がかけられている記事が巷に出回る。それにより、会社の内情はより激しくなっていく。

会社の重鎮たちの様々な思惑が交差し、やがて会社内は混沌としていく。企業の繁栄から衰退までを描く企業ミステリーです。

「半沢直樹」っぽい?

企業内のごちゃごちゃを描く作品と言えば、最近(といっても結構前か…)で言うと「半沢直樹」ですよね。「風紋」を読んでいて、なんだか半沢直樹っぽい感じだなあとなんとなく思っていました。というより、企業内のあれこれを描くのは池井戸潤さんの作品と似ているような印象を受けました。

人間関係のごちゃごちゃ、お金の問題、不正、派閥、ゴシップ、などなど、このような企業内の汚い部分を描く、という点では非常に類似していると言えます。

ただ、この「風紋」と「半沢直樹」には圧倒的な違いがあると思いました。(どっちが良い、どっちが面白いという話ではない。)

というのも、風紋は会社のごちゃごちゃに主人公はほとんど直接的には関わらないのです。「会社の闇を暴いてやろう」、「上層部の悪事を暴いて復讐してやろ」というような野望はありません。ただ単に、会社の内情を人づてに聞いたり、社史編纂の仕事の業務内で知りえた情報から想像するといったことしかしません。

つまり、ゴシップ話で盛り上がっている、だけなんですよね。なので、主人公というよりは、会社の内情を描いた物語の語り手的な役を担っているともいえると感じました。社長はこんな人だ、もしかしたら部長は悪事を働いているかもしれない、など、客観的な事象と、主観的な想像を交えて、読者に対して状況説明をしてくれています。

そこがこの小説の最大の特徴で「半沢直樹」などの池井戸作品との決定的な違いかなと思いました。

主人公がトラブルの中心に介在せず、遠くから第三者的な目線で眺めている感じが面白かったです。

感想

上層部は嫌な人多い

松本清張さんの作品は人間の嫌な部分をリアルに描くイメージがあります。特に「砂の器」は人間のプライド、憎悪、嫉妬などが描かれており、人間の嫌な部分が顕著に表れていた印象です。

この作品でももちろん、人間の汚い部分をたくさん見ることができます。会社での出来事がメインなので、人間の嫌な部分は相当出てきそうですよね。

リアルでも会社なんて嫌な人いっぱいいるのですから、松本清張さんが会社をテーマとした作品を手掛けたと考えると容易に想像できそうです。

印象的だったのは、上層部の人間です。元々のイメージとして、なんとなく権力者=悪人というのが一般的なイメージです。この作品でもそれはイメージ通りの描かれ方をしていました。無能だが社長にゴマをすって重鎮になっている人、有能だが見栄を張ることに一生懸命で更に不正を行っている人、など嫌な上層部がたくさん出てきます。

主人公はそれらの嫌な上層部をちゃんと軽蔑して、こき下ろしているので、とても共感出来て面白かったです。冷静に分析して、○○さんはこういう人だと少し馬鹿にしているような表現が癖になりました。

いつの時代もマスコミは脅威

マスコミの脅威も特徴的でした。

主人公が所属する会社の商品の良くない記事が巷に出回るのですが、会社側は躍起になってもみ消そうとします。

なんでも、新聞社などのマスコミにばれると会社の存続が危ぶまれるほどの事態になるとのことです。それだけでも、会社にとっていかにマスコミが脅威なのか分かります。

その他にも、ある会社が新聞社の記事でとんでもないことになった。だとか、マスコミの脅威を強調するような表現がたくさん出てきます。

松本清張さんの作品何ので、相当昔の時代背景ですが、この当時からマスコミは脅威だったんだなと感じました。今でも芸能人が週刊誌にすっぱ抜かれると、瞬く間に炎上して、いつの間にかテレビからいなくなっている。というようなことは多々あります。

不正を行った企業は、ワイドショーなどで大々的に取り上げられて、批判の目にさらされていますよね。日産自動車のゴーン氏の不祥事の際のマスコミの盛り上がり方は異常なほどでしたよね。

今も昔もマスコミは脅威なのですね。

こんな人にオススメ

会社に勤めている人

会社に勤めている人は主人公にとても共感できると思います。特に会社に不満を持っている人は会社って嫌なところだよね。とより共感できるかと思います。

特に会社内の人間の嫌なところがふんだんに描かれているので面白いと思います。

盛者必衰が好きな人

権力者が堕ちる様を見たい方はオススメです。半沢直樹のような爽快感はあまりないかもですが、楽しめると思います。

会社がテーマの作品が好きな人

会社の内情が描かれているので、そういうのが好きな人にはオススメです。

真面目な人

真面目な人にはこの小説を読んで欲しいです。私の完全な主観ですが、真面目な人にはこの小説は刺さると思います。

まとめ

今回は松本清張さんの「風紋」を読んだ感想を消化しました。

会社内の人間関係、不正、派閥などの人間の汚い部分が顕著に描かれていた作品で楽しめました。

自分は会社に勤めまだ3年目ですが、共感できる部分が多々あり、面白かったです。やっぱりどこも同じような感じなんだなあと少し安心しました。

誰が内通しているのか?という謎もあったりとミステリー要素はあったのですが、若干ミステリー要素は物足りないかなと感じてしまいました。

ミステリー作品というより、会社をテーマとしたヒューマンドラマとして読むととても面白いです!

興味がある方は是非読んでみて下さい!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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