【感想】米澤穂信「儚い羊たちの祝宴」ゾッとしたい人にオススメ

2021年9月3日

こんにちは。つぼたっくのあおいです。

今回は米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴」を読んだ感想について紹介します。

「氷菓」を読んで米澤穂信さんの他の本も読みたいなあと思っていました。

フォロワーさんに「儚い羊たちの祝宴」を勧められたので早速購入。

「氷菓」は学園モノのミステリー小説で、今回の作品も爽やかな感じを想像していましたが、、、

恐怖!

爽やかとは真逆も真逆。

短編集なのですが、最初から最後まで不気味で救いが無い。悲惨な物語でした。

ホラーというよりは人が怖い系

登場人物が人間っぽくないので全然共感できない感じがより怖さを引き立てます。

後味はあまり良いとは言えませんが、クセになるような魅力があります。

そんな米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴」を読んだ感想を紹介します。

書籍概要

題名:儚い羊たちの祝宴

著者:米澤穂信

初版発行日:2008年11月28日

値段:590円+税(文庫)

あらすじ

「儚い羊たちの祝宴」は短編短編小説で、計5編で構成されています。

上流階級のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」。

このサークルをめぐる5つの物語が展開されます。

ただ、それぞれの話に繋がりはほとんどなく独立しています。

お嬢様や使用人など、上流階級の関係者が主人公の物語です。

身内に不幸がありまして

上流階級の使用人・村里夕日の手記で綴られる。

お嬢様の吹子のことを敬愛している。

バベルの会の合宿の2日前に、勘当された吹子の兄が屋敷に襲撃し惨殺が起こる。

その後、兄は死亡したこととして処理されるが、翌年も翌々年も身内が殺害されていく…

北の館の罪人

主人公は巨大財閥六綱家の当主の愛人だった母を持つ。

母の遺言に従って六綱家に身をよせるも、別館に住む長男・早太郎の世話・監視役を命じられる。

主人公は早太郎に卵、糸鋸、酢など雑多なもののお使いを頼まれる。

その中で六綱家の秘密を段々と知っていくが…

山荘秘聞

目黒に本邸を構える貿易商の別荘「飛鶏館」

屋島守子は使用人として飛鶏館の管理を任される。

1年経っても1人も飛鶏館を訪れることは無く、掃除や備品の管理などをして過ごす。

ある日、そとの見回りをしてると崖から落ちて瀕死の登山家を発見する。

家に連れ帰って療養させていると、仲間の登山家が探しに別荘へとやってくるが….

玉野五十鈴の誉れ

高台寺に屋敷をそびえ立たせる小栗家の長女・純香は使用人の玉野五十鈴を与えられる。

使用人というよりは友達のような関係で、彼女からたくさんのことを学ぶ。

2人で大学に進学し、「バベル会」に入会する。

楽しい日々が続くと思っていたが、 純香 の父の兄が殺人事件を起こし…

儚い羊たちの晩餐

元「バベルの会」会員・大寺鞠絵による「バベルの会」消滅とそれに至る鞠絵の物語が綴られている。

成金の父は見栄を張るために、厨娘(ちゅうじょう)という料理人を雇う。

父に何が食べたいか聞かれた 鞠絵は調理してほしい材料として「アミルスタン羊」を所望する。

感想

オチに救いが無さすぎる

読んでいて意味が分かってくるとだんだん怖くなっていきます。

そしてオチが怖すぎる。

背筋がヒュッとなり、鳥肌が立ちます。

特に 玉野五十鈴の誉れ儚い羊たちの晩餐は特にショッキングです。

最初から最後まで不気味な感じが漂っており、最後の方になるとジェットコースターのように一気に怖くなります。

ジェットコースターの方がましかも…

登場人物が全員歪んでいるんですよね。

人間ぽくないところがより怖さや救いの無さを掻き立てています。

ハッピーエンドが好きって人には絶対オススメできません(笑)

鮮やかな伏線回収

「儚い羊たちの祝宴」は怖いとか不気味とかのイメージがとても強いです。

ですが、伏線回収がとにかく鮮やか。

恐怖よりも感激の方が先に来るんじゃないかってくらい凄いです。

玉野五十鈴の誉れ 山荘秘聞 は特に伏線回収が鮮やかでした。

前者は伏線回収と共にとてつもない恐怖が襲ってくるので要注意。

後者は伏線回収と緊迫感があります。本書のなかでは一番スッキリとしたエンディングでした。

伏線がとてもマニアックとも言われており、自分が気づいていない伏線もたくさんありそう…

もっと読書をしたくなる

もっと読書をしたくなるというよりは、もっと読書しておけばよかったの方が正しいですかね。

この本にはとにかく様々な本が登場します。

その本のセリフが引用されていたり、登場人物に例えたり、会話の中に小説の話がたくさん出てきます。

ちなみに、登場する小説は1つも読んだことが無かった…

少しでも読んでたら伏線に気付けたり、より面白く感じたりできたのかなあと少し後悔です。

もっと色々な小説を読みたいと思わせてくれました。

まとめ

今回は米澤穂信さんの「儚い羊たちの祝宴」を読んだ感想について紹介しました。

浮世離れしている上流階級のことを描いた小説です。

とても不気味な語り口調で、物語の世界に引き込まれること間違いなし。

背筋がヒュッとなるような展開が癖になります。

夏はそろそろ終わりますが、ゾッとして暑さを忘れたいときにはぴったりの作品です。

爽やかな青春系ミステリーからこんな不気味な物語まで表現できる米澤穂信さんに脱帽でした。

人間の怖さが描かれた作品が好きな方や、不気味で凄惨な物語が好きな方は是非読んでください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。