【感想】「死神の精度」リアリティのある死神系小説

2021年12月13日

こんにちは。つぼたっくあおいです。

今回は、伊坂幸太郎さんの「死神の精度」を読んだ感想を紹介します。

いつもミステリー小説ばかり読んでいる私ですが、たまには他の小説も読んでみたくなるのが読書好きの性。

おしゃれなタイトルだなと「死神の精度」をなんとなく手に取りました。

タイトルだけで自分の心を動かされたので、即購入。こんな感じで本を選ぶのって楽しい!

肝心の内容はというと…..

良い!

タイトルだけでなく文章や展開もおしゃれ。とってもきれいな文章だなあと感動しました。

満足感のある内容で購入して良かったと思っています。

この本には千葉という死神が主人公の短編小説です。

主人公の死神は6つの短編全てに登場し、終始死神の視点で物語が進行するんですね。

色々なテイストの話がありますがどれも後味は良く、読後は割とスッキリでした。切ない話やドロドロの話もあるけど締め方がとても綺麗だからだと思います。

そして死神のキャラが本当に魅力的。この「死神の精度」を読めば死神に対する恐怖はなくなるんじゃないでしょうか。

死神に対する恐怖ってなんだ(笑)

書籍概要

題名:死神の精度

著者:伊坂幸太郎

初版発行日:2008年2月10日

出版社:文春文庫

「死神の精度」のあらすじ

人間の姿に擬態した死神の「千葉」

8日後に死ぬ予定の人間に近づき、1週間調査を行う。

その人間が死ぬのに相応しいなら「可」 相応しくないなら「見送り」と判断をする。

そして「可」の判決を下した人間の死の瞬間に立ち会う。

それが「千葉」という死神の仕事です。

死神にも会社のような組織があり、「千葉」はその調査部に所属する平社員のような立場です。

短編の1話ごとに「千葉」が死ぬ予定の人間と出合うといったストーリーです。

短編小説のそれぞれを紹介すると長くなるので全体的な概要だけの説明となります。

読み始めたときに、この世界観だけで「あ、これ面白い」と感じて本の世界にすぐに没入しました。

「死神の精度」の特徴

後味はスッキリ

死神が死を判断する。という設定を聞くと後味の悪い結末を想像する人は多いと思います。

ですが、どの短編も後味は超スッキリ

切ない話や悲しい話はあるのですが、終わった後に尾を引くような後味の悪さは感じなかったです。

リアリティが高い

物語に死神が登場すると、どうしてもリアリティがなくなり、SFのような世界観になってしまいます。

ですが、「死神の精度」は現実として受け入れてもおかしくないくらいリアリティがありました。

死神とリアリティを共存させつつ、魅力的な世界観を創造できる伊坂幸太郎さんは凄すぎます!

死神の視点で進行

「死神の精度」は全ての短編が死神の「千葉」の視点で語られています。

第3者視点(神の視点)や相手の視点はほとんど描かれていないので、ほとんど全てが死神の主観となっています。

感想

感情が揺れ動かされる

読んでいてさまざまな感情を抱きました。

嬉しい、悲しい、切ない、怒り、楽しい、感動した、など、様々な感情に揺れ動いていました。

短編集だから、色んなテイストがあるのは当然ですが。

一冊でここまで幅広い表現ができるのは凄いです。

とにかく感情が色んな方向に行くので、感性豊かな人は読むのが大変かもしれません(笑)

1番感じたのは「切ない」です。

やはり「死」を題材とすると、切ない展開になりますよね。

後味が悪いとか、救いのない話とかではなかったので自分的には読みやすかったです。

おしゃれな名言がたくさん

「死神の精度」にはおしゃれな名言がたくさん出てきます。

以前「グラスホッパー」を読んだ際も名言が印象に残ったのですが、今作も心に残る名言がたくさんあったので少し紹介したいと思います(笑)

人間が作ったもので一番素晴らしいのはミュージックで、最も醜いのは、渋滞だ。

死神の精度p167

これはこの本の中で何回も出てくる名言中の名言だと思っています。

ミュージックが好きで渋滞が嫌い。と言っているだけですが、死神目線で主語が人間となるとなぜか急に名言っぽくなりますよね。

ちょっとした微妙な嘘は、誤りに近いんだってば

死神の精度p335

これは死神の千葉ではなくて、登場人物の人間のセリフです。その人間が見た映画のセリフを引用しているのですが、これもとてもおしゃれだなあと思いました。

嘘っていうとマイナスイメージが強いですが(最近特に)、人のためにちょっとした嘘をつける人ってスマートで憧れます。

人間というのはいつだって、自分が死ぬことを棚に上げている。

死神の精度p147

本作品には「死」について様々な表現がなされています。その中でも一番心に響いたセリフがこれでした。

「死」について考える時ってなんとなく自分の「死」は除外して考えがちです。怖いし。

そんな浅はかな考えをズバリ指摘されているような気がして読んでいるときにドキッとしてしまいました。

3つ名言を紹介しましたが、他にもたくさんおしゃれな名言があるので是非読んでみてください。オススメな名言があったらコメントで教えてくれたら嬉しいです!

真面目な死神に親近感

死神の「千葉」の性格が独特で面白いです。

凄く変わっているんだけど、真面目と言うか、几帳面というか、、とにかく独特なんですよね。

人間の言葉や文化などを学ぼうとして、変な質問をするため周りを驚かしています。

例えば「旅行とは、どういう行動のことを指すんだ?」「それがやくざの定義か?」

物事の概念や単語そのものの意味が知りたいんでしょうね。

少しだけ可愛く思えたりもします。死神なのに。

ただ、真面目ではあるのですが、良い人(死神)ではないんですよね。

だから調査する人に同情したり、温情で死を「見送り」にしたりはしません。

あくまで自分の仕事(死の判決を下す)に対して真面目なだけです。

死神なのに妙に真面目に仕事をしているから親近感が湧きました。

まとめ

今回は伊坂幸太郎さんの「死神の精度」の感想を紹介しました。

普段ミステリー小説ばかり読んでいますが、こういうジャンルの小説も面白くて良いですね。

短編小説ですが、伏線やつながりなどもあり満足感のある1冊だと思います。

死神が登場するにもかかわらず、リアリティを持たせた世界観を表現できるって本当にすごいと思いました。

興味がある人は是非読んでみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました。