【感想】「フーガはユーガ」理不尽な環境で強く生きる双子の物語

2022年2月5日

こんにちは。つぼたっくのあおいです。

今回は伊坂幸太郎さんの「フーガはユーガ」を読んだ感想を紹介します。

最近、本屋に行くと必ずと言っていいほど目立った場所に置かれています。

タイトルの耳障りの良さ重厚感のある表紙に惹かれ、なんとなく購入。伊坂幸太郎さんの小説は事前にどのような内容か全く分からない状態でも、読みたくなるような不思議な魅力がありますよね。

「グラスホッパー」を購入した際も、タイトルと表紙だけでなんとなく選んだなような気がします。そんな感じで購入しても、読んだら絶対に満足ができる。という安心感が伊坂幸太郎さんの作品にはあります。

実際に「フーガはユーガ」を読んでみましたが、ファンタジー的な要素を含んだ現実性の高い作品だと感じました。

双子の身体が瞬間移動して、お互いの場所が入れ替わる。という特殊な現象が起こる双子が登場します。
※中身が入れ替わるとかではなく、周りの人から見るとAがいたはずの場所にB瞬間的に表れるというような感じ(Bの場所にはAが現れる)

現実からかけ離れている現象が起こっているにもかかわらず、リアリティは絶対に失われないです。現実の中にファンタジー要素を絶妙に織り交ぜる技術は、伊坂幸太郎さんならではだと思っています。

双子の兄常盤優我(以降ユーガ)の性格も相まって、「死神の精度」を思い出させるような感じでした。
(ユーガの性格と死神の精に登場する死神の千葉の雰囲気や話口調がとてもよく似ていました。)

伊坂幸太郎さんの「フーガはユーガ」のあらすじ、特徴、読んだ感想などについて紹介していきます。

書籍概要

題名:フーガはユーガ

著者:伊坂幸太郎

初版発行日:2021年10月15日

出版社:実業之日本社文庫

「フーガはユーガ」のあらすじ

ファミレスで双子の兄のユーガがテレビ制作会社の社員に、自分の過去について話している場面から始まります。

子どもの頃に家庭内でDVを受けていた話、印象に残っている出来事、今も心に残っている事件について、
あとは、特殊能力を使って成し遂げたこと。

などなど、過去から現在にかけての生い立ちを説明していきます。基本的に回想はシリアスなシーンばかりで、読んでいると胸が痛くなるような出来事が多いです。

過去の出来事を話しているかと思えば、物語は急にファミレス内での出来事に移ります。そこからの急展開に目が離せません。

「フーガはユーガ」の特徴

回想ベースで進行

この小説のほとんどが、双子の兄ユーガの回想で進行します。なので、ほとんどがユーガの視点から語られる形式です。小学、中学、高校、大学、今に至るまで、、、と過去の出来事が短編小説のように語られていきます。

ユーガの話口調で回想が進められている途中に、急にファミレスでの会話に場面が変わることが多々あり、いつ回想が終わった?となることも多かったです。

ただ、ユーガは僕の喋る話には記憶違いや脚色だけじゃなくて、わざと嘘をついている部分もあるので、真に受けないほうがいいですよ。と度々、過去の話には嘘も混じっていることを念押ししています。

伊坂さんがあからさまにそのような表現を続けているということは…先まで言わなくても分かりますかね(笑)

リアリティとファンタジー

上でも言いましたが、リアリティのある世界観の中にファンタジー要素が絶妙に入り込んでいます。双子の2人の身体が入れ替わるという現実味のない設定が、シリアスな展開の中で良い味を出しているんですよね。

空想上の土地や場所ではなく、日本の東北地方が舞台となっているので、物語のベースは現実的な内容です。というか、入れ替わりの設定以外はほぼ全てが実際に起こっているであろう現実的な物語だと思います。

リアリティとファンタジーのこの塩梅こそがこの小説の魅力です。

理不尽で救いが無い

読後の後味はやや悪めですかね。ハッピーエンドっぽい終わり方ですが、色々と悲惨なことや理不尽なことが起こりすぎて、完全なハッピーエンドとは言えないのが正直なところ。

救いのない物語はやはり胸が締め付けられるような感じがして、やるせないですね。現実感が強めだから尚更心がえぐられます。。。

主人公の双子が小さい頃から家庭内で虐待を受けていたり、小さな子どもが誘拐にあったりと、、深刻な社会問題が描かれているので、そういうのが苦手な人は読むのがしんどいかもしれないです。

ただ、ファンタジー要素や主人公の双子の強かさのおかげで、悲惨さはだいぶ軽減されている気がします(笑)

2000年代~2010年代での出来事

作中の出来事から、主人公の幼少期は2000年代、高校大学時代は2010年代と推測できます。

双子の兄ユーガの大学時代に「40枚のデッキを組んで戦うカードゲーム」が登場します。大学の同級生が、「懐かしい、小学生の頃よくやったなあ」と言っています。作中でも10年以上前から流行っているカードゲームとあるので、おそらく遊〇王かデュ〇マだと予想できます。

ということは、主人公の小学生時代は2000年代で、大学時代は2010年代と推測できると思います。自分は今20代前半なので、この主人公とは同年代ということですね。自分は小学生の時遊〇王をやっていたので、懐かしい気持ちになりました。

大学時代は周りが当たり前のようにスマホを使っていたり、震災のことが登場したりと他にもこの物語の時系列が推定できる場面が多々出てくるので、2000年代~2010年代が背景にあるのはほぼ確実だと思います。

感想

双子の逞しさに救われる

上では散々「救いが無い」とか「理不尽」な物語と紹介しましたが、主人公の双子たちはそれでも強く生きようとしています。

幼い頃から家庭内で理不尽なDVを受けており、過酷な状況で生活をしています。そんな地獄みたいな生活も双子2人が力を合わせ、なんとか生き抜いています。

ただ、こんな酷い環境に置かれながらも2人の会話や言動にそこまで悲壮感は感じられないのが、印象的でした。楽観的で運動が得意な弟フーガと冷静で勉強が得意な兄ユーガが2人の強みを活かしていろんなことをやります。(もちろん2人の身体が入れ替わる能力も当然利用します。)

家に帰りたくないから何とか外で暇つぶしを探していると言っていますが、双子2人の冒険には読んでいて心が躍りました。

あと、2人の過去で出会う人がほとんど温かいんですよね。理不尽な世界観でも人とのつながりの大切さや、人情の温かさなど、大切なことをたくさん感じることのできる作品だと感じました。

ただ、理不尽で救いのない話。で終わらせないところが、この小説の良いところです。

最後の怒涛の展開は裏切りの連続

最後の100ページくらいの展開は圧巻でした。続きが気になりすぎてあっという間に読み終わりました。

色々と衝撃的なことが起こりすぎて、絶句です。読んでいて完全に裏切られたところも多々あり、もう何がなんやら…というくらい、最後の展開に振り回されました(笑)

ドキドキして次はどうなるんだ?とここまで読書に没頭したのは今回が初めてかもしれないですね。心拍数も若干あがっていたのではないかと思います。

この怒涛の展開は是非実際に読んで味わって欲しいです。

まとめ

今回は伊坂幸太郎さんの「フーガはユーガ」を読んだ感想について紹介しました。

理不尽な環境で生きる双子の生き様が描かれた、読み手に様々な感想を与える作品だと感じました。理不尽さの中にも、力強さや人の温かさ、人生の儚さ、懐かしさなどを随所で感じることができる良作だと思います。

読み終わった後は、「人生楽ありゃ苦もあるさ」(この小説は苦の方が圧倒的に多いが)という歌詞がぴったりだなあと感じました。この本を読むとこれからの人生、強く生きようと少し前向きになれる人も多いのではないかと思います。

理不尽さと温かさ、リアリティとファンタジーなど、双極に存在するものが絶妙に織り交ぜられている「フーガはユーガ」は自分にとっても特別な1冊になると感じました。

気になった人は是非、読んでみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました!