【感想】村上春樹「アフターダーク」とある町の夜を覗く夢の中みたいな世界

こんにちは。つぼたっくのあおいです。
今回は村上春樹さんの「アフターダーク」を読んだ感想について紹介します。
村上春樹さんの小説読んだことないなあ。ふと思ったので、早速本屋さんに。代表作と言えば「ノルウェイの森」や「1Q84」などですかね。
ただ、私は定番なものや有名なものはなんとなく敬遠したくなるのです。なぜかいつも斜に構えてしまうんですよね。結局はいずれ有名作品も読みたくなるんですけど。。
あまり有名ではなさそうな本はあるかな~(失礼)と探していたら、「アフターダーク」。ビビッときました。アジアンカンフージェネレーションASIAN KUNG-FU GENERATIONの好きな楽曲と同じ名前ということもあり、惹かれました。
こうして、村上春樹さんの小説で初めては「アフターダーク」に決めました。他の有名な小説もいずれは読みたいです。
ということで、「アフターダーク」を読んだ感想を紹介していきます。ネタバレ無しです!
書籍概要
題名:アフターダーク
著者:村上春樹
初版発行日:2006年9月15日
出版社:講談社文庫
あらすじ
深夜のファミレスで本を読む女子大生のマリ。そこに高橋という若い男がやってきて話しかける。昔あったことのある顔見知りのようで、戸惑いながらもそこはかとない会話が進む。
高橋と別れたあとも、ファミレスで本を読んでいるマリ。
そこにカオリとなのる体格の良い女性が話しかけてくる。ラブホテルで事件があって、力を借りたいとのこと。その後一緒にラブホテルに向かう。
その同時刻で、ある部屋で寝ている女性の場面にシーンが移る・死んでいるように静かに眠る女性をある視点がじっくり観察している。
ある夜の一部を特殊な視点から観察する不思議な世界観を体感する。
感想
分からないことばかり
読んでいる途中も、読み終わった後も一番感じたことは分からないです。
どういうテーマなのか?どういう話なのか?どういうことを描いた作品なのか?など、ふんわりしていてはっきりとは分からないんですよね。100人に「この小説はどんな話ですか?」と聞いても100通りの回答が返ってくるのではないでしょうか。
それぐらい、抽象的な内容だと思いました。起承転結の起が永遠と続いているような感じですかね。
何か起こりかけているようで、何も起こらない。これからどうなるのか?どうやって物語は終息を迎えるのか?と思っていたらそのまま完結したので驚きました。
その街で起こっていることをただ見ているだけ。記事のタイトルの通り、夜の街の1シーンを覗き見しているだけのような感じです。
伏線かと思われていたことや、謎だったことは全く回収されないまま終わるので、スッキリしない終わり方ですね。後味が悪いというよりは、静かに落ち着いた感じでフッと明かりが消えるような終わり方です。
ただ、「分からない」だけであって「面白くない」というわけではないのです。小説はとても面白い。何が面白いのかと聞かれると、言葉にはしづらいのですが。。
不思議な世界観に完全に入り込むことができ、読書を通じて感性が豊かになる気さえしました。
抽象的な内容で終始フワフワしているような感じなので、好き嫌いは別れると思いますが、これぞ村上春樹となるような作品ですね。村上春樹作品を読むのは初めてですが、イメージ通りでした。
オサレな情景にうっとり
町の情景や部屋の雰囲気を表現するシーンが多いのはこの小説の特徴です。その描写がとってもオサレなんです。多彩な言葉で描かれる町の情景に思わずうっとりしていました。
ただ、綺麗な風景や、迫力のある自然などを表現しているわけではないのです。ごく普通の街並みや何の変哲もない一室などをまるで壮大なもののように表現しているのが印象的でした。
自分なら同じ景色を見ても、何も感じないでしょうね。感性の豊かさ表現の多彩さに圧倒されました。
広い視野の中では、都市は一つの集合体のように見える。無数の血管が、とらえどころのない身体の末端にまで延び、血を循環させ、休みなく細胞を入れ替えている。新しい情報を送り、古い情報を回収する。新しい消費を送り、古い消費を回収する。新しい矛盾を送り、古い矛盾を回収する。
アフターダークp5
これは、小説の最初に出てくる一節なのですが、このオサレさで完全に心を掴まれました。
小説のいたるところで、このような表現が出てきますので、必然的に展開は遅くなります。情景を思い浮かべながらのんびりとした気持ちで楽しむのが良いですね。
哲学的な会話に知的好奇心をくすぐられる
この小説は基本的には会話ベースで進行します。ファミレス、ラブホテルの部屋、公園、バーなど、場所は変わりますが、マリがいろんな人と会話します。とりとめない雑談から、過去の身の上話、死生観などとにかく浅い話から深い話までいろんな会話を繰り広げます。
哲学的な話や知的な話が多かったので、知的好奇心がくすぐられました。昔から宇宙や死について考えるのが好きで、いつも不安になって夜も眠れなくなるんですよね。この小説でも、興味深い会話がなされていました。
特に心に刺さったのは、記憶の話でした。本名を捨ててラブホテルで働いている「コオロギ」という女性との会話です。
彼女の考えでは、人間は記憶を燃料にして生きているのだそうです。辛くて心が折れそうなときは、今までの記憶を引き出すことで、なんとか乗り越えていくことができている。人間の記憶は直接的に生命の維持には関与しないが、心を支えてくれる柱となってくれるのですね。
過去の楽しかったことや辛かったことなど、それらを全て生きるための燃料に変える。というのがとても素敵で心に刺さりました。自分は、過去にしがみついてしまったり、過去に囚われてしまったりと、過去にまつわる感情はネガティブなイメージがあります。過去の記憶をポジティブに捉える考え方がしっくりきました。
他にも哲学的な話や、概念的な話はたくさんあったので、気になる方は是非読んでみてください。
こんな人にオススメ
ジャズや楽器が好きな人
ジャズ音楽が良く登場します。会話の中で出て来たり、店内で流れていたりするので、知っている人はその曲を想像できて楽しいと思います。
タイトルの「アフターダーク」はジャズソングの「ファイブスポット・アフターダーク」という曲からきているので、その曲を聞いてから読むと、雰囲気を味わえて楽しめるかもです。
哲学や概念が好きな人
哲学的な話などが良く出てくるので、宇宙や死について考えるのが好きな人は楽しめるかも。
オチや解決を求めない人
綺麗なオチや伏線回収など、を求めなくても楽しめる人にオススメですね。
ミステリーばかり読む自分にとってはとても斬新でした。
景色をぼーっと眺めるのが好きな人
なんとなくのイメージですが、景色をぼーっと見て心を落ち着けられる人はこの小説が楽しめそうと思いました。
風情を楽しめる人にもオススメですかね。
まとめ
今回は村上春樹さんの「アフターダーク」を読んだ感想について紹介しました。
奇妙な雰囲気が癖になる小説。スッキリはしないけどモヤモヤもしないという不思議な終わり方でした。何も解決はしていないけどなぜかほっとしました。
いつもミステリーばかり読んでいる私にとっては、一風変わった内容で、斬新でした。読んだことのある作家さんの中だと、伊坂幸太郎さんの作品はどこか似たような雰囲気が感じられました。
村上春樹さんの他の小説も読みたいと思ったので、また読んだら紹介したいと思います。
気に入ってくれた方は是非読んでみてください!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
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