【感想】小説「砂の器」 ミステリー好きなら必ず読むべき本

2021年11月7日

こんにちは。つぼたっくあおいです。

今回は松本清張さんの「砂の器」を読んだ感想について紹介します。

私事ですが、この前久々に実家に帰省しました。(距離でいうと5km程ですが)

最近ミステリー小説にハマっているということを話すと、父が是非読んで欲しいと「砂の器」を勧めてくれました。

ストーリーの奥深さ人間関係の泥沼醜さリアルな描写、どれをとっても凄い。

絶対読むべき!

とさんざん言われたので、せっかくだからと読んでみることに。

元々、松本清張のミステリー小説は気になっていたので、良い機会でした。

そんなきっかけで読了した、松本清張「砂の器」を読んだ感想を紹介します。

書籍紹介

基本情報

題名:砂の器

著者:松本清張

初版発行日:昭和48年3月27日(上巻) 昭和48年3月30日(下巻)

出版社:新潮文庫

あらすじ

まず、東京都 蒲田駅の線路の上で男の変死体が発見されます。

手掛かりは、被害者が喋っていた東北弁と会話の中で出てきていたカメダという名前のみ。

必死の捜査の末、未解決となり捜査本部は解散されてしまうが、ベテラン刑事の今西は任意捜査として事件を追っていく。

数少ない手がかりから、様々なアプローチによって事件解決に迫っていくと思いきや…

立て続けに第2、第3の事件が発生してしまう。

1960年代の日本を舞台に描かれた、長編推理小説。

当時の日本の時代背景を明瞭に描かれており、著者の社会的な主張も垣間見える作品です。

感想

刑事の執念に感服

この小説では今西というベテラン刑事が、事件を追っていきます。

最初は捜査本部が置かれて、多くの刑事たちが捜査を行います。

ただ、1ヶ月程しても事件が解決しない場合は捜査本部が解散され、その後は任意捜査となります。

任意捜査になってから解決する事件は非常に少なく、事実上の打ち切りだそうです。

なんとなく警察官はもっと長い間事件を追っていると思っていたので、1ヶ月くらいで打ち切りとなるということにびっくりしました。

確かに、他にも事件は起こるし人も限られているから考えたら当たり前のことですね。

小説を読んでいると、知らなかったことを知る機会に巡り合えるので良いですね。

そんなこんなで、捜査本部は解散となったのですが、刑事の今西は個人的に事件の捜査を行っていきます。

被害者が東北弁を使っていて、”カメダ”という言葉を喋っていたという事実から、東北地方の羽後亀田という地域に出張する。

証拠品を見つけるために、夏の暑い日に線路沿いを何時間も歩き回る。

容疑者の過去を探るため、休みの日を使って自費で金沢や京都に聞き込みに行く。

などなど、とにかく執念が凄いです。

ほとんどサービス残業だろ…と現代を生きる自分は嘆かわしい気持ちになりました。

だだ、これだけ頑張っても全然捜査は進みません。

無駄足になったり、なんの手がかりも見つけられずに帰ってくることも多々ありました。

特に上巻は展開がとても遅いので、小説苦手な人はちょっと苦痛かも。

自分もなかなか進まない操作にヤキモキしちゃいました(笑)

リアルな人間模様の描写が深い

人間模様の描写がとても印象的でした。

この小説では「ヌーボー・グループ」という新進気鋭の芸術家集団が登場します。

音楽家、評論家、劇作家などの芸術分野で特出している、若者の集団のことです。

現代でいうと…お笑いの第7世代見たいなものですかね。ちょっと違う気もするけど。

とにかく、「新しいことをやっていこうぜ!」的なことを掲げているグループです。

その人たちの人間関係が、なんとも複雑なんです。

仲間内で本心を探り合ったり、皮肉を言い合ったり、裏で陰口をたたいたり。

人間の醜さや嫌なところを描くのが本当に旨いんですよね。

ただ、嫌な面だけではないんです。

刑事と後輩の関係、地方で出会った人達は良い人が多かったです。

人間の温かさ、つながり、情熱など人間の良い面もリアルに描かれていることも良かったです。

国語の授業だったら良い面と悪い面の対比関係がとうたらこうたらとか言われそうだな。

浅い感想になりますが、人間って深いなと思いました。

当時の深刻な社会問題に考えさせられる

自分は推理の末犯人を逮捕してめでたしめでたし。

というハッピーエンドなミステリー小説を読むことが多いです。

自分自身がハッピーエンドが好きなので。

ただ、この作品はハッピーエンドとは言えなかったです。

ミステリー小説なのでもちろん謎は全部解けんですけど。

これは人によって好き嫌いが別れるところかなと思います。

自分も後味はあまり良くないなと感じました(笑)

というのも、1960年代の日本の時代背景が原因です。

差別格差などのかなり深刻な社会問題を題材にしているんですよね。

同じ日本での出来事だとは思えないシーンがたくさんです。

読んでいてやりきれない気持ちになることも多かったです。

自分の知識不足と感じる部分も多く日本の歴史についてもっと勉強するべきだなと痛感しました…

ただ、この陰鬱な雰囲気がミステリー小説としての深みを醸し出しているのだと思いました。

好き嫌いは別れるかもですが、こういう雰囲気の小説もアリだなと思わされました。

この本がオススメの人

この本はオススメなのはこんな人です。

  • 本格的な推理(ミステリー)小説が読みたい
  • 陰鬱な雰囲気のストーリーが好き
  • 読み応えのある小説を読みたい
  • リアリティのある小説が好き

こんなところですかね。

上下巻合わせて1000ページ弱あるので、結構ボリューミーです。

あまり小説を読まない人からすると、読むのはしんどいかもしれないです。

ただ、本当に面白いのでこういう小説が苦手な人にも是非挑戦してほしいです!

まとめ

今回は、「砂の器」の感想について紹介しました。

こういう、がっつりミステリー。みたいな小説に対しては苦手意識がありました。

おそらく、自分では購入することはおろか、手に取ることもなかったかと思います。

でも実際読んでみると、松本清張作品の奥深さに触れることができました。

やっぱり食わず嫌いはよくないですね。

この本を紹介してくれた父に感謝しかないです。

選り好みをせずに、様々な種類の作品に触れることが大切だと気づかされたような気がします。

気になった方は是非読んでみてくださいね。

最後まで読んでいただきありがとうございました!