【感想】探偵さえいなければ|探偵たちに翻弄される哀れな犯人

2022年6月16日

探偵さえいなければ…..

鳥賊川市で罪を犯した犯人たちは最後にきっとこう言います。いかがわしい探偵たちに翻弄される哀れな犯人の物語。

東川篤哉さんの鳥賊川市シリーズ8作目「探偵さえいなければ」について紹介します。

前回、前々回に続き今回も短編集。沢山読むにつれ、短編集が癖になりつつあるようです。鳥賊川市ワールドの沼から抜け出せなくなるのも、そう遠くないかもしれません。

今作は倒叙形式の話が多いのが特徴でした。鳥賊川市のいつものメンバーに翻弄される犯人が面白かったです。

※犯人の視点で物語が進行するのを、倒叙形式というようです。解説読んで勉強しました。

主人公のはずの鵜飼探偵の出番が少ないのはちょっと寂しかったです。

書籍概要

題名:探偵さえいなければ

著者:東川篤哉

初版発行日:2020年1月20日

出版社:光文社

感想

それぞれの短編の感想を紹介します。

倉持和哉の二つのアリバイ

犯人目線で進行する話。ちょっと、というかだいぶ抜けている犯人はシリーズ5作目の鉄男や6作目の第一話で登場する藤枝修作を彷彿とさせます。

本人なりにまじめに様々な工作をするが、何も考えていない適当な探偵 鵜飼杜夫に偶然にも見破られてしまいます。

せっかく頑張ったのに、あんな見破られ方をして可哀想。と思わざるを得なかったです。こんなに可哀想な犯人は見たことが無いですね。

トリックはとてもシンプル。そのため、ミステリー要素は少なくラノベっぽい作品でした。

短編集の1作目として、鳥賊川市ワールドに読者を惹きこむ役割の作品ですね。

ゆるキャラはなぜ殺される

容疑者も被害者も全員ゆるキャラ というメルヘンチックなお話。

鳥賊川市のゆるキャラナンバー1を決めるコンテスト「ゆるコン」でゆるキャラが殺害される。前作で登場した剣崎マイカも出場者の1人(匹?)で、鵜飼探偵たちと共に、事件の謎を解きます。

ゆるキャラの特性を活かした、トリックやアリバイ、殺人の動機は斬新で面白かったです。ほのぼのとしたゆるキャラたちのやり取りに癒されます。

そして最後は久しぶりに鵜飼探偵が活躍したと思ったら、、、

博士とロボットの不在証明

人工知能搭載の人型ロボットにそそのかされて、殺人を犯す博士の話。ロボットを使いアリバイ工作を行う。

ちなみに、タイトルの不在証明=アリバイなんですね。こっちの表現の方がかっこいい。

構成もしっかりしており、短編集の中では割と長めでした。章立ても分かれており、読み応えのあるしっかりミステリー。長編として書こうとしたけど、短編になっちゃった作品なのかな?

星新一の作品に出てきそうな、アナログなロボットが良い味を出していました。オチもしっかり綺麗で、全体的に星新一作品のような雰囲気もありました。

鵜飼探偵は登場せず、朱美さんだけで事件を解決する珍しい回。

ちなみに、自分は「探偵さえいなければ」の中で一番好きな作品です。

とある密室の始まりと終わり

密室トリックを使った殺人。東川篤哉さんは密室トリックがとても上手だと感じます。今までの作品でもたくさん密室トリックはありましたが、その中でも特に面白かったです。

トリックの斬新さはこの本の中で一番かなと思います。そう来たか、と虚を突かれるトリック、また予想を裏切る展開で楽しめました。

ちょっとグロい描写もありますので、苦手な方は注意。

またもや探偵たちによって、酷い目に合わされる犯人にも注目です。

被害者によく似た男

超有能な犯人目線で進行される作品。トリックやアリバイ偽装は割とシンプルだが、とても強固。鳥賊川市シリーズに登場する犯人の中でも、トップクラスに頭が切れる犯人でした。

完璧化と思われた作戦でしたが、思わぬところに落とし穴が隠されていました。その落とし穴が何とも鳥賊川市シリーズっぽくて面白い。伏線も綺麗に回収しており、まとまった話でした。

鵜飼探偵、流平、朱美さんのいつもの3人は誰も登場せず、砂川警部と志木刑事の2人で事件を解決します。志木刑事が珍しく活躍したのも驚きでした。

こんな人にオススメ

ポップな作品が好きな人

ミステリーと聞くと身構える人がいるかと思いますが、この作品はとにかくポップ。

ユーモア要素が散りばめられており、くすっと笑えるギャグが心地よいです。

小説をあまり読まない人でも読みやすい作品です。

キャラ物の作品が好きな人

シリーズ物なので主要キャラが特徴的です。キャラの掛け合いなどを楽しめる人にはオススメです。

できればシリーズの1作品目から読んで欲しいですが。

ライトノベルが好きな人

ライトノベルではないのですが、ライトノベル感は少しあるのかなと。

ライトノベル好きだけど、普通の小説にも挑戦してみようかなという人は、まずこの作品を読んでみると良いのではないでしょうか。

まとめ

今回は東川篤哉さんの「探偵さえいなければ」を読んだ感想を紹介しました。

倒叙形式(犯人目線)の話が多いのが特徴的な本作ですが、いつもとは違う斬新さでとても楽しめました。

いつもの奇想天外なトリックとは違い、シンプルなトリックが多様されていたのも印象的でした。

ポップなギャグと個性的なキャラクターには、シンプルなトリックが合うのかもしれないですね。

そして、鳥賊川市シリーズの新作「スクイッド荘の殺人」も発売されているので、早く読みたいです。久しぶりの長編なのでとても楽しみ。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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