【感想】松本清張「点と線」時間のトリックに唸る推理小説

2022年1月22日

こんにちは。つぼたっくのあおいです。

今回は松本清張さんの「点と線」を呼んだ感想について紹介します。

砂の器を読んでから、松本清張さんの他の本も読んでみたいと思いました。
とりあえずページ数が少ない「点と線」を購入。どうしてもページ数が少ない本に惹かれてしまう。。長編小説もさらっと読めるようになりたいものです。

ページ数は約250ページと少なく、サッと読み終わりました。内容はちょっと物足りないと感じる方も多いかと思います。

昭和46年発売なので、当時の時代背景を鮮明に感じることができます。例えば、仕事上で遠くの部署と連絡を取るときに電報を使うこととか18時に博多駅を発車した急行が次の日の15時頃に到着(福岡東京間の移動に1日近くかかる)ようなことです。今では全然考えられないようなことが多々あります。
そもそも最初は電報って何?って感じでした(笑)

短いので少し読み応えには欠けますが、当時の時代背景が鮮明に蘇る本格推理はとても面白かったです。

書籍概要

題名:点と線

著者:松本清張

初版発行日:昭和46年5月

出版社:新潮社

あらすじ

博多駅付近の海岸で情死している男女の死体が発見される。赤坂の料亭「小雪」で働く女性と、目下、汚職事件で世間を賑わせているxx省の課長補佐の男。

汚職事件の中心人物ということや、現場の状況から、恋人との情死と片付けられる。(精神を病んで、もしくは責任を感じての自殺みたいな感じかな)

福岡署の鳥飼刑事は被害者が亡くなる前の行動に疑念を持ち個人的に捜査を始める。目撃情報を探るも有力な情報は得られない。

操作が滞っているところに、東京の警視庁から三原警部補が訪れる。三原もこの事件に疑問を持っており、捜査しているとのこと。三原は鳥飼刑事の情報から、列車のダイヤグラムが事件の鍵であると判明した。

東京に帰った三原は犯人のアリバイ崩しに奔走する。

「点と線」の特徴

アリバイ崩しがメイン

ミステリーといえば、この中の誰が犯人なのか?ということに焦点を当てて、その中でアリバイやトリックを崩していくというのが主流です。アリバイやトリック、動機などを調査し、最後の推理パートで「まさかお前が!」と衝撃を受けるようなミステリーの方が馴染みがありますよね。

ただ、この本では刑事がある1人の人物に目星をつけ、その人物だけを徹底して追求します。
その人物のアリバイをどうやって崩すということに焦点をあてた推理小説です。

そのため、読んでいるとほとんどの人がすぐに犯人が予想できるようになっています。

些細な情報や偶然から細い糸をたどってアリバイを崩していく状況はもどかしくもありますが、だんだんと謎が解けていくところが爽快でした。

昭和の時代背景

この本が出版されたのが1950年代付近なので、この小説もそれくらいの時代背景でしょう。上でも言いましたが、昭和の時代背景をとても感じられることが特徴です。

ただ、今回の事件のアリバイはその時代ならではという感じもするので、今読んでも目新しさは無いかもしれないです。
あまり言うとネタバレになりますが、今の時代ならそこまで不可能ではないような…と感じるトリックもその時代だと難しいんですよね。

主役っぽい刑事が2人

主体となって捜査を行う刑事が2人出てくることもこの小説の特徴です。

前半では福岡署の鳥飼刑事が現場を捜査し、 東京の警視庁から来た三原警部補に事件を引き継ぎ、後半は三原警部補が捜査を進めるといった構成です。

小説の前後半で主役の刑事が切り替わるため、違った視点での推理が楽しめます。

感想

犯人をじわじわと追い詰めていく

この小説の一番の醍醐味は犯人をじわじわと追い詰めていく展開だと感じました。

最初は容疑者にすら上がっていなかった犯人の行動を徹底的に調べ上げ、どんな些細なことにも疑いアリバイを崩そうとする執念が凄かったです。

捜査の際の着眼点が面白く、「こんな些細なことからここまで繋げられるのか!」と驚きながら読んでいました。

仮定を立ててそれを検証する。ダメだったら他の方法を模索し…と途方もないような方法なので見ていてもどかしく感じることも多かったです。それでも着実に犯人を追い詰めていく展開から目が離せませんでした。

時間軸が複雑で難しい

この小説では汽車の発車時間、到着時間など、とにかく時間が出てきます。ミステリー小説なら犯行時刻やアリバイの時間などで時間はよく出てくるのですが、この小説はとにかく時間が多く出てくると感じました。

特に列車時刻表が何度も出てくるので、○○を何時発…とか××に何時到着…○○からXXまでは〇時間かかる…..などとにかく時間が多いです。

途中で訳が分からなくなって、前のページに戻るばかりでした…メモしながら読んでもいいかなと思うくらいです。

主人公が捜査の整理をするときにまとめてくれているので、全部を理解しなくても読み進められるのですが、読んでいて頭が凄く疲れました(笑)

ただ、時刻表を使ったトリックやアリバイ工作はとても面白く、めちゃくちゃ考えられているなと感じました。

オチはモヤッと

後味は少し悪い終わり方かなと感じました。事件が解決してスッキリはするのですが、少しモヤっとするような感じです。

やはりいつの時代もずる賢い人が得をして、真面目な人が損をしてしまうのか…とちょっと切ない気持ちになりました。ただ、勧善懲悪でスッキリ!で終わらせないところが、松本清張さんの良いところですよね。

人間関係のもつれも相まって、最後の方はドロドロとしたオチになっているので、ハッピーエンドが好きで、何もかもスッキリ!というオチが好きな方は少し苦手な終わり方です。

ただ、勧善懲悪なストーリーよりもリアリティがあり、オチとしては綺麗にまとまっています。台詞回しや情景も相まって風情のある終わり方で個人的には良かったと思います。

まとめ

今回は松本清張さんの「点と線」について紹介しました。

松本清張さんの作品を読むのは2つ目でしたが、面白かったです。最近の小説も良いけど、昭和の時代背景をリアルに感じられる小説もなかなかアリかなと思ってきました。

リアルな世界観とじわじわと真相に近づいていく展開がとても楽しめました。

松本清張さんの小説はまだまだたくさんあるので、これからも読んでいきたいですね。

気になった人は是非読んでみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました。