【感想】「ある閉ざされた雪の山荘で」演技か現実かに翻弄されるミステリー

2022年2月13日

こんにちは、つぼたっくのあおいです。

今回は東野圭吾さんの「ある閉ざされた雪の山荘で」を読んだ感想について紹介します。

半年ほど前に読んだ東野圭吾さんの「仮面山荘殺人事件」がとても面白かったので、すぐにこの本を購入しました。タイトルに両方とも山荘というワードがあったので、惹かれたのです。

つまり今までずっと積読だったということですが、、、他の積読がはけてきたのでやっとこさ読了。

読み終わった感想は・・・ 設定が斬新で展開が読めない! でした。

タイトルから冬に山荘に閉じ込められた人たちが殺されていく。的なことを想像していましたが、その想像の斜め上以上をいく設定が斬新すぎました。

展開もとても速く、サクサク読み進めることができます。

「ある閉ざされた雪の山荘」について、ネタバレ無しで紹介していきます。

書籍概要

題名:ある閉ざされた雪の山荘で

著者:東野圭吾

初版発行日:1996年1月15日

出版社:講談社

あらすじ

オーディションに合格した7人の若手舞台俳優が山奥のペンションに集められる。

人里離れた山荘に遊びに来た舞台役者7人が大雪のせいで、ペンションに閉じ込められた

ペンションのオーナーも買い物に行ったっきり帰ってこない

電話線が切れており、街に電話をかけることができない

という特殊な設定での舞台稽古が始まる。(実際には、バス停はすぐ近くで電話もつながる。外は晴れており、帰ろうと思えばすぐに帰れる。)

演出家の東郷陣平の新しい試みで、このペンションで起こった出来事を実際の舞台のストーリーとするとのこと。

推理劇という設定に則って、1人1人と仲間が消えていくのだが、果たしてそれは現実なのか芝居なのか?

特徴

登場人物が多い

推理小説なので仕方がないですが、登場人物は多いです。人がどんどん殺されていく小説はどうしても登場人物が多くなりますね。

最初の場面から一気に7人が登場するので(オーナー含めると8人)、名前と人物像を把握するのが大変でした。さっき喋ったのは誰だっけ?と何回も読み返していました。

小説を読みなれていない人は、最初は大変かもですね。

名前と人物像を簡単にメモしておくと読みやすいかも。あと、最初のページにペンションの平面図があるので、写真で撮るなどして確認しながらだと読みやすくなるかも。

まあ、ドロドロとした人間関係はミステリにつきものですよね。東野圭吾さんの作品は人間模様の描写が本当にリアルです。

2つの視点で進行

2つの視点が交互に代わりながら進行されます。

1つは舞台役者7人の内の1人である久我の視点。当事者の立場から、その場の出来事や考えが主観的に語られます。

もう1つは客観的に全体が見えている視点です。神の視点とか作者の視点とかの表現があっていますかね。全体を把握している視点から起こっていることが客観的に語られます。

久我の視点、神の視点、久我の視点、・・・・と切り替わりながら、進行していきます。

そして、その2つの視点は重複しません。久我の視点で語られた部分が、再度神の視点で語られるようなことはありません。

設定が秀逸

山奥のペンションで1人づつ殺されていくという設定は割とオーソドックスです。この設定で実際に芝居やをするという二重構造になっているのが、この小説の特徴です。

実際に殺されているのか?全部芝居なのか?ということに読者は最後まで翻弄されることになります。よくこんな秀逸な設定を思いつくよな~と感嘆しました。

最初にしっかり設定の説明があるので、一気に作品にのめり込むことができます。

この設定から、読んでいると最後に何かあるんだろうなという想像はできるのですが、予想の斜め上以上を行く展開に驚愕すること間違えなしです。

また、ペンションの本棚に「そして誰もいなくなった」や「グリーン家殺人事件」など次々に人が殺される小説が置かれており、この後の展開を暗示していることも印象的でした。

それらの小説を模したような展開もあるため、先に読んでいたらより楽しめると思います。

感想

最後まで惑わされた

ペンション内での出来事が、現実なのか、演技なのか最後まで惑わされました。どっちともとれるような表現や、ミスリードが本当に巧みです。

最初は推理劇の設定で過ごしている役者たちは、どこか気の抜けた感じで生活していきます。1人目の役者が殺された時もみんな平然としています。(死体は無く、紙に殺された状況などが書かれている)

この時点で読者はもしかして本当に殺されている?という疑念が始まりますが、役者たちはただの演技として淡々とストーリが進行していきます。

ただ、演技では済まされないような事実に気付き始め雰囲気は一変します。この段階で初めて読者と登場人物の役者が同じ疑念を持つようになっているのですね。

もしかしたら本当に殺されているのでは?と役者たちが気づき始めてからは圧巻の展開でした。読み手も登場人物も最後まで、現実か演技化に惑わされることになります。

その展開がハラハラで最後のページまで目が離せなくなりました。こういう特殊な設定となると、最後に何かあるんだろうなとは思っていますが。思いもよらない展開で、読後の満足感も最高でした。

役者が良い味を出している

今回の設定上、登場人物は全員役者です。その役者たちがこの物語に良い味を出しています。

ペンションで殺され役に選ばれても、実際には殺されないと分かっています(物語の序盤は)。が、みんな殺され役になるのをなるべく回避しようとしています。

というのも、このペンションでの推理劇設定の舞台練習が実際の台本になるため、早々に退場してしまうと、本番でも出番が少なくなると考えるからです。

殺されることが無いと分かっていても、みんな殺されないように回避したり、自分が探偵役になるために推理しようとしたりします。人となりや人間関係を探ったり、アリバイを作ったり、実際の推理小説のように進行しているのですね。

これは登場人物が若手舞台俳優だからこそ成り立つ状況です。本当にこんな絶妙な設定良く思いつきますよね。

そして、どの役者も人間味があって魅力的です。舞台俳優をやっているだけあって1人1人個性的です。それを客観的(偏見まじり)に評価していく久我の視点も面白かったです。

人間関係のドロドロや好き嫌いもしっかりと描写されていて、設定以外は完全にリアルな推理小説です。

まとめ

今回は東野圭吾さんの「ある閉ざされた雪の山荘で」について紹介しました。

山奥のペンションというありふれた状況に斬新な設定をぶつけることで、全く新しい物に昇華されている作品です。

ペンションで推理劇の舞台練習を実際に生活をしながら行うという二重構造になっています。この絶妙な設定に心が奪われるのはあっという間でした。

設定が複雑で難しそうだなと読み始めは思いましたが、展開が早く分かりやすいので、思ったより読みやすかったです。登場人物が多いミステリーにしては読みやすい部類に入るのではないかと思います。

少し前に読んだ「仮面山荘殺人事件」とも少し雰囲気が似ており、既視感がありました。どちらも20年以上前の作品とは思えないくらい斬新ですよね。東野圭吾さんの作品は色褪せないです。

興味がある方は是非読んでみてください!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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